インコネル 625(ALLOY 625)の概要と成分について
インコネル625は、低炭素のニッケル—クロム—モリブデン—ニオブ合金で、様々な腐食性媒体に対して優れた耐性を持っています。
低温から1090度の間で高い強度と靭性を有しており、特に疲労強度が優れています。低炭素含有率と安定化熱処理により、インコネル625は650~900°Cの温度に50時間放置されても鋭敏化の傾向をほとんど示しません。
-196~450°Cの使用温度における圧力容器の材料としてTÜVによって承認されており、約600°Cを超える高温用途では、高強度ならびにクリープおよび破断に対する耐性が要求されるため、炭素成分を高くし、溶体化焼鈍を行ったタイプが通常採用されています。
また、この合金は、非磁性で組織的にはニッケルとクロムの地にモリブデンとニオブを固溶する固溶強化型合金です。良好な耐酸化性に加えて、この合金は多くの腐食環境に対して優れた耐食性を示します。
さらに、インコネル625の機械的特性は時効硬化により若干上昇させることが可能です。
主な製造メイカー:スペシャルメタルズ社(インコネルという名称は、スペシャルメタルズ社の商品名となり、同等品としてALLOY625があります。)
耐食性について
インコネル625は、高い合金量のため広範囲の厳し腐食環境に対して良好な耐食性を示します。例えば腐食環境の弱い大気、淡水、海水、中性塩類、アルカリ類にはほとんど腐食されません。さらに厳しい腐食環境においてもニッケルとクロムとの組み合わせにより酸化性の化学薬品に対して耐食性を有し、さらにニッケルとモリブデンの高い含有量によって、還元性の雰囲気にも耐食性を示します。モリブデンは孔食と隙間腐食に対して優れた抵抗性を持ち、またニオブは溶接中における鋭敏化を防ぎ、それによって粒間割れを防止する効果があります。さらに、高ニッケル含有量は塩素イオンによる応力腐食割れを阻止します。これらの特性によって、この合金は幅広い腐食条件に対して使用可能となっています。
硫酸 | ◯ |
---|---|
塩酸 | ◯ |
フッ化水素酸 | ◯ |
燐酸 | ◯ |
硝酸 | ◯ |
有機酸 | ◯ |
アルカリ類 | ◯ |
塩類 | ◯ |
海水 | ◯ |
応力腐食割れ | ◯ |
高温での性質
耐酸化性 | ◯ |
---|---|
耐浸炭性 | ◯ |
高強度と安定性 | ◯ |
(538℃)
インコネル625 の成分・特性一覧
化学成分
C | 0.10 以下 |
---|---|
Mn | 0.50 以下 |
Si | 0.50 以下 |
P | 0.015 以下 |
S | 0.015 以下 |
Cr | 20.00 〜 23.00 |
Co | 1.00 以下 |
Mo | 8.00 〜 10.00 |
Fe | 5.00 以下 |
Al | 0.40 以下 |
Ti | 0.40 以下 |
Ni | 58.00 以上 |
Nb + Ta | 3.15 〜 4.15* |
機械的性質
焼鈍し材 | |
---|---|
引張り強さ MPa |
827 ~ 1034 |
0.2% 耐力 MPa |
414 ~ 621 |
伸び % |
30 ~ 55 |
硬さ | HB 145 ~ 240 |
物理的性質
比重 | 8.44 |
比熱(21℃) J/kg・K |
419 |
溶融温度 ℃ |
1290 ~ 1350 |
熱伝導率 W/m・℃ |
10.2 |
縦弾性係数 MPa |
20.7 x 104 |
電気抵抗率 μΩ・cm |
129 |
(メーカーより)
板厚
板厚は調べれただけ板厚になりますので、商社や問屋によっても取り扱ってる板厚は変わります。
板厚 | t0.10、t0.15、t0.20、t0.25、t0.30、t0.50、t0.80、t1.0、t1.27、t1.98 |
該当規格
ASTM:UNS N06625 – B446(丸棒)B443(板)、B444(シームレスパイプ)、B446(溶接パイプ)
ASME:UNS N06625 – SB-443(板)、SB-444(シームレスパイプ)、SB-446(丸棒)
JIS:NCF625 – H4552(シームレスパイプ)、H4553(丸棒)、G4901(板)