64チタン(Ti-6Al-4V)とは?特性・加工性・用途まで徹底解説

目次
64チタン(Ti-6Al-4V)とは
64チタン(Ti-6Al-4V)は、アルファ・ベータ型のチタン合金であり、高強度・軽量・耐食性・生体適合性を併せ持つハイパフォーマンス素材です。 世界中のチタン使用量の50%以上を占めるほど汎用性が高く、「チタン合金の主力」とも言える存在です。
UNS番号はR56400、ASTMグレード5、別名TC4、Ti64などの呼称があります。
64チタンの化学成分
元素 | 含有量(重量%) |
---|---|
チタン (Ti) | 残部 |
アルミニウム (Al) | 5.50〜6.75% |
バナジウム (V) | 3.50〜4.50% |
鉄 (Fe) | 最大0.3〜0.4% |
酸素 (O) | 最大0.08〜0.2% |
窒素 (N) | 最大0.05% |
水素 (H) | 最大0.0125〜0.015% |
64チタンの主な特性
物理・化学的特性
- 比重:4.43(鉄の約60%)
- 融点:1540〜1650℃
- 熱伝導率:極めて低く、切削時に熱が集中
- 高温で化学反応性が高く、酸素・窒素に反応しやすい
機械的特性
- 引張強度(アニール材):895〜1090MPa
- STA処理材:1100〜1220MPa
- 高い比強度を持つ → 軽量構造に最適
- ヤング率が小さい → 変形しやすい
耐食性
64チタンは空気中で自然酸化膜を形成し、塩化物環境下でも高い耐食性を示します。 ただし、還元性酸・乾燥塩素ガスでは注意が必要です。
生体適合性
優れた生体適合性と耐食性から、インプラントや人工骨に使用されます。 金属アレルギー対策には純チタンの方がより安全とされます。
疲労特性・ドウェル疲労
常温近傍でドウェル疲労(dwell fatigue)に弱いことが知られており、適切なショットピーニングなどで対策が必要です。
摩耗抵抗
摩擦に弱く、焼き付きやすいため摩耗用途には不向きです。
64チタンの加工性 ― 難削材としての現実
切削加工
熱がこもりやすく、刃先にダメージを与えるため、64チタンは難削材に分類されます。 また、切削くずが発火する危険性もあるため、安全対策が不可欠です。
溶接加工
チタンは高温で酸化しやすく、シールドガスによる保護が必須です。 TIG溶接が主流で、溶接部の清浄性が品質を左右します。
熱処理と冷間加工
アルファ相・ベータ相の制御により物性を調整可能。真空熱処理や不活性雰囲気中での処理が望まれます。
脱スケール・酸洗処理
熱処理後の酸化皮膜(アルファケース)を除去するため、酸洗+機械的除去を併用。水素脆化には要注意です。
64チタン(Ti-6Al-4V)の代表的な用途
- 航空宇宙分野(例:ボーイング787、エアバスA350)
- 医療用途(人工関節、人工骨、外科用器具)
- 自動車部品(高性能エンジン部)
- マリン用途(シャフト、プロペラ)
- ゴルフクラブ、時計、ボルト、眼鏡フレームなどの精密部品
まとめ:64チタンは妥協のない高性能素材
加工の難しさはあるものの、軽さ・強さ・耐久性・生体適合性のすべてを求めるなら、64チタンは最適な選択肢です。 「軽量化+高強度」の両立が必要な現場では、今後もその重要性は高まるばかりです。
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