SUS304 CSP (バネ用ステンレス鋼)の概要と成分について
オーステナイト系ステンレスの中で最も使われているステンレスのバネ材です。2B材などの一般的なSUS304は磁性はありませんが、バネ用であるSUS304 CSP は磁性が多少あります。
CSP材は、市場性の高い物で言うと3種類から成り、1/2H、3/4H、H(これらを調質と言います)とがあり、HはHardの頭文字を取ったものなので、この3種類の中ではHが最も硬い材料になります。
また、冷間圧延を行なっているので、板厚精度も良い材料が多いですが、調質の違いによる精度の差は、JIS規格上ありません。
その他に、t0.2〜t0.3以下の材料では、Hの後ろにSRやTAと言う材料もあります。これは、SR(ストレスリリーフ)、TA(テンションアニール)と言う意味で、特殊な熱処理を行い残留応力を除去した材料です。エッチング加工する部品に使用され加工後のソリや歪み等の変形が低減されたり、平坦性に優れているため、寸法許容差や形状許容差等もより厳しい仕様で管理されていたり、表面改質により表面濡れ性を改善し、レジスト密着性が良かったりします。
製造会社:日本金属、日立金属ネオマテリアル
熱処理について
SUS304 CSPは熱処理による硬化(バネ強度のアップ)は行いません。熱処理をするとすれば、低音焼きなまし(テンパー処理)で曲げ加工を行なったときなどの残留応力を除去するための熱処理になります。
板バネとしての利用
板バネの材料として使用されることが多い材料ですが、その選定は実際に使用してみて合わせていくのが一番近い道なようです。というのも、線材のコイルバネの場合、負荷のかかる方向が一定なため計算しやすいことと需要があるため設計ソフトも豊富にあります。しかし、板バネは固定方法、負荷の方向が一定でないため、算出が困難であると言われています。
成分・特性一覧
化学成分
C | 0.08以下 |
Si | 1.00以下 |
Mn | 2.00以下 |
P | 0.045以下 |
S | 0.03以下 |
Ni | 8.00〜10.50 |
Cr | 18.00〜20.00 |
機械的性質
調質 | 引張強さ N/mm2 | 伸び % |
1/2H | 780以上 | 6以上 |
3/4H | 930以上 | 3以上 |
H | 1130以上 | – |
調質 | 硬さ HV | 曲げ性 V 曲げ |
1/2H | 250以上 | 厚さの2倍以下 |
3/4H | 310以上 | 板厚の2.5倍以下 |
H | 370以上 | − |
調質 | 耐力 N/mm2 | ばね限界値 N/mm2 |
1/2H | 470以上 | 275以上 |
3/4H | 665以上 | 335以上 |
H | 880以上 | 390以上 |
物理的性質
密度 g/cm3 | 7.9 |
比熱 J (kg・K) | 502 |
熱膨張係数 (0~100℃)10-6/K | 17.3 |
熱伝導率 W/(m・K) | 16.3 |
電気抵抗 μΩ・cm | 72 |
ヤング率 N/mm2 | 193 |
板厚
H | 3/4H | 1/2H |
0.005 | ||
0.01 | ||
0.02 | ||
0.03 | ||
0.04 | ||
0.05 | ||
0.06 | ||
0.07 | ||
0.08 | ||
0.09 | ||
0.1 | 0.1 | 0.1 |
0.11 | ||
0.12 | ||
0.13 | ||
0.14 | ||
0.15 | 0.15 | 0.15 |
0.16 | ||
0.17 | ||
0.18 | ||
0.19 | ||
0.2 | 0.2 | 0.2 |
0.25 | 0.25 | 0.25 |
0.3 | 0.3 | 0.3 |
0.35 | 0.35 | 0.35 |
0.4 | 0.4 | 0.4 |
0.45 | ||
0.5 | 0.5 | 0.5 |
0.6 | 0.6 | 0.6 |
0.7 | 0.7 | 0.7 |
0.8 | 0.8 | 0.8 |
0.9 | ||
1 | 1 | 1 |
1.2 | 1.2 | 1.2 |
1.5 | 1.5 | 1.5 |
2 | 2 | 2 |
2.5 |
※2018/04/01
板厚公差
板厚(mm) | 公差(mm) |
0.10以上 0.16未満 | ±0.020 |
0.16以上 0.25未満 | ±0.030 |
0.25以上 0.40未満 | ±0.035 |
0.40以上 0.60未満 | ±0.040 |
0.60以上 0.80未満 | ±0.045 |
0.80以上 1.00未満 | ±0.050 |
1.00以上 1.25未満 | ±0.050 |
1.25以上 1.60以下 | ±0.060 |
JIS G 4313の厚さの許容差